地下鉄から外へ出たら、世界が黄色がかっていた。
ただでさえ花粉がひどいと騒がれているのに。
春はだいっきらい、春なんてなけりゃいいのに、
と、みな口を揃えて吐き捨てるように言う。
ようにと言うか、本当に鼻水と涙を流し、イガイガした喉で言っている。
春生まれの私としてはなんとなく悲しい。
しかしそもそも春は無意識でいても自律神経が乱れやすく、
つまり体調が不安定になりやすい季節なのだ。
春に山菜を食べるのは、冬の間に体内に蓄積された老廃物を排出させるためというし。
春自体には罪はない。いや、やっぱり春のせいなのか?
これ以上春が嫌われていったら、春はどうなるだろうか。
春がもし人間だったら、耐えられないよね、
クラス全員から「オマエキライ」って言われるんだから。
引きこもるか、自暴自棄になるか、死にたくもなる。
春はかわいそうだな。
完全に金子みすゞぶってるな、私。
この時期は、いくら掃除してもすぐに床やテーブルがざらつく。
(あ、私ウソをつきました“いくら掃除しても”の部分)
黄砂のせいで掃除が大変だという話題があがるたび、
私の脳裏には、砂を淡々とかき出す岸田今日子の姿が浮かぶ。
そう、安部公房の「砂の女」だ。
安部公房は私の好きな作家の一人。
(あとから自分と誕生日が同じと知り、
だから何だってことはなんもないのにウレシイ)
非現実的で不思議なモチーフを用いながら、
考えさせられるのはものすごく現実的な世界。
何をもってして正常・異常とするのか、自由・不自由とするのか、あるいは
人は何か得体の知れない恐ろしいものへ惹かれる精神を持っている等。
そうして砂の女の気分になりながら掃除をしていたら、
ネット通販で購入したテーブルクロスが届いた。
黄色に青色の線の入ったリトアニア製リネンのクロス。
これなら黄砂もカモフラージュされるかもしれない。
私は黄色は好きではない。
単体としての黄色は好きではないのだが、青色が何より好きで、
青色との組み合わせとして黄色をチョイスする傾向にあるのだった。
あくまで脇役であり、あなたの好きな色は?と聞かれたら決して黄色とは答えない。
白や黒のほうが好きだし、それらは青と相性もいいのに、
黄色で温かさや明るさを補っている。
じゃ、それって結局は好きということになるのだろうか?
なのにどうして認めたくはないのだろうか?
煙霧や黄砂、古くはカレーにがっつくキレンジャーのイメージのせいか。
かわいそうだな、黄色。
再びの金子みすゞ。
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