2013年11月23日土曜日

モミの木

子供の頃、童話『マッチ売りの少女』が好きだった。
作者はデンマークのハンス・クリスチャン・アンデルセンだ。
この人はすごい心配性で、まだ死んでいない人が間違って埋葬されたという話を聞き、
自身が寝る時には枕元に「死んでいません」と書いた紙を置いていたんだとか。
貧しい家に生まれ、容姿などのコンプレックスが強く、自信がないわりに、
好きな女性にはラブレターの代わりに妙な自伝みたいなものを送りつけたり、
今で言うところの空気読めない性格で、生涯独身だったらしい。
いいねえ〜ますます興味がわくなあ。

人魚姫、親指姫、みにくいあひるの子、裸の王様などもこの人の作品だ。
そこまで有名ではないのだが『モミの木』という作品があり、
このたび、小宮由氏訳による『モミの木』がアノニマ・スタジオより発売となりました。
挿絵は、マリメッコのデザイナーでもあるサンナ・アンヌッカさん。
布張り、金箔押しの装丁、ステキな本に仕上がっております。定価2200円(税別)。
大人のための絵本として、プレゼントにいかがでしょう。 
あらすじは・・・さすがはアンデルセンらしく、
ハッピーハッピールンルンルン、のわけはないのでして。
人生とは、を考えさせられるものです。
「今、この時をどう感じ生きるのか」
詳しくは・・・買って読んでみようじゃありませんか。





2013年11月17日日曜日

ただのウナギの頭

今日は美容院に行ってきた。
そこには2年程通っている。
30代のカップルの美容師が経営しており、
当初は一人がつききりでシャンプーから会計まで担当する方式だった。
つまり店内には最大でも店員2人と客2人だけ。
ガチャガチャしておらず、
他のお客との兼ね合いで待たされるようなこともなく、
繁忙なはずの日曜が直前のタイミングでも予約が取れ、
ここ大丈夫なのかしらん?とやや不安になりつつも、
私の担当のオーナーお兄さんの腕前はなかなか良くて、気に入っている。

しかし最近になって、若い見習いスタッフが入った。
お笑い芸人のサバンナの高橋って人にやや似た男の子だ。
静かにニコニコして、ちょっと気弱で頼りなげなタイプ。
そして今日は、更にもう一人、若い女子スタッフも加わっていた。
おや。人気が出てきたのか?
これで、次第に雑な扱いされるようになったらザンネンだなあ。
出会った頃は〜こんな日が〜来るとは思わずにいた〜♪
にならないよう祈るばかりだ。

しかしそれにしても、美容院でのトークというのものは
どこでもワンパターンなのだろう。
エリアのランチの店情報か、
この頃の天気について(暑さ寒さ、雨、地震)か、
時期によっては夏休み冬休みの予定。
こちらが広げている雑誌に出ている企画の内容をひろってか。
あるいは、「髪伸びるの早いですねえ」と言われ
「そうなんですよー」と答えるか。
つまらんのお。
美容師たちは、もう少し話術を磨く訓練をすべきではないか。
過去に通っていた美容院の担当者は、
トークが得意だと本人は思っているふうだったが、
ただ単にノリが軽いだけで、むしろそういうほうがタチ悪い。
アホらしい話にこちらが気遣って「ですよね〜っ」と
ノリを合わせたりしているのだから。
かといって、こちらから自分のプライベートの話をあれこれするのもメンドイ。
日頃おしゃべりな私だが、意外にも美容院ではなるべく雑誌に集中して
トークの気遣いをせずに済むように努めている。
まあ幸いにも、今のオーナーはペラペラしゃべりかけてくるタイプではなく
そこそこの定番話で済んでいるので、イライラはしないが。


前回行った際、その前日の天気が急転したという定番話の流れから、
私はその時、滅多に行ったことのない秋葉原にいた、
メイドカフェのメイドがビラを配っていた、と話し、
「メイドカフェっていったい何が楽しいんでしょうかねえ?」(私)
「わからないですよね〜」(オーナー)
という、たいして盛り上がらないキャッチボールが交わされた。
オーナーが何とはなしに、見習いサバンナ高橋に
「行ったことある?」とふったら、
意外にも「ええ、まあ」という答えが。それも何回かあるらしい。
ついでに、キャバクラもある、とまんざら嫌いじゃない様子。
へえぇ〜このサバンナくんがキャバクラねえ〜
オーナーも「そ、そうなの?」とびっくり顔(思わず手が止まっとるぞい)。
私は話を飛躍させ、じゃあいっそ、お座敷遊びなんかどう?興味ある?と聞いた。
冗談のつもりだった。
しかしサバンナくんは「ああ、できることなら経験したいですね」と真面目に言う。
オーナーが「いくらかかるかわかって言ってんの?」と呆れたように聞くと、
サバンナくん「わかんないですけど・・・10万とかですかね?」と
まるっきり見当違いでもなさそうな(私は知らないけど)、
なおかつ彼の立場からしたら不相応な金額をさらっと言う。
なんだろうかね、草食系の極みふうな男の子によるこの発言は。

今日のサバンナくんは、私のとなりの人の髪にパーマ液を塗りながら、
小学校の時の学芸会で、演し物がスイミー(レオ・レオニ作)だった
という話をしている。
「それで何の役をやったんですか? 」というお客の問いに、
「ウナギの頭です。ただの通りすがりみたいなもんです」
とサバンナくんはニコニコして答えている。

決して目立つタイプの人ではないのだが、
それこそただの通りすがりみたいなタイプなのだが、
何かこう、妙な印象を残すのである。ウナギの頭だもんなあ。



2013年11月10日日曜日

食材偽装ネタのごった煮風

なんだかもうわけがわからないことになっている食材偽装のニュース。
悪質なケースもむろんあるだろうが、それはどうなのか?というものまで
マスコミは躍起になって「ここでも!」「こんなことも!」と騒いでいる。
「騙された、許せない」と返金を求める消費者も相当の数にのぼるという。

私はホテルやレストランを擁護するつもりはないけれど、
例えば芝海老というものを、ではそれまで消費者はどこで獲れるどんな海老だと
認識していたのだろうか?
東京湾で獲っていると信じていたのに!!と思っていたのだろうか。

実は海外の養殖物のバナメイ海老が使われていた、
養殖物には抗生物質や漂白剤の残留の問題があり、
客の健康が損なわれる恐れがあるのだ、
といったことを書いているジャーナリストもいるが、それは話がズレてやしないか?

伊勢海老ではなくロブスターだった、というのも意味がよくわからない。
伊勢海老も(狭義では違うけども)広義ではロブスターの一種であるし、
オーストラリア産の高級伊勢海老だとしたらそれは偽装とは違うと思うし、
ロブスター=オマール海老のことなのであれば、
オマール海老だって高級素材としての価値があるのだし、
伊勢海老とオマール海老は身質が違うから
何も嘘ついて書く必要もないしなあ。
そのへんの泥沼で釣ってきたザリガニでも出したんだろうか。
(ちなみに、ザリガニも美味しいものはあります)


一連の報道に出てきているかどうか知らないが、
海老と言えば、手長海老はどうなんだ。
手長海老のグリルとかリングイネといったメニューをよく見るが、
本来の手長海老は淡水に生息する別の海老であり、
正確に言えばアカザ海老だ。
通称として手長海老の呼び名がメジャーになってしまっている。
アカザ海老は国産特有の品種で実は伊勢海老より高い海老だが、
海外の近縁種(どこどこアカザ海老といった名前)で
そこまでは高くないものが入ってきているので、
そこそこの値段で提供できている。
比べなければ海外産でも結構美味しいものだ。
「手長海老と表記されていたが、実はアカザ海老だった」
「アカザ海老と表記されていたが、実は輸入品だった」
と糾弾するのか?


しまいには、フレッシュミルクは市販の牛乳だった、
手づくり風ハンバーグは機械で作っている、
おふくろの味の定食は中年男性コックが料理、と
もうお笑いのネタにされるところまできている。

こうなってくると、そろそろ
グランメール風(おばあちゃん風)やボンファム風(良妻風)あたりも危険か。
「シェフの気まぐれサラダと明記しておきながら、
 実際には事前に真面目に内容を考えて作っていた」
というニュースが伝えられてもおかしくない。

「偽装か?の問いに誤表示と言い張るホテル」
単調な切り口で問いただしても、身を守りたい側はそりゃそう答えるだろう、
偽装の数を声高に言っても、それはもうただある種のお祭り騒ぎを
煽るだけになってしまう。
街頭インタビューで「あのホテルは信用していたのに裏切られた気持ちです」といった
回答ばかりを放映するが、答えているその人は何回くらいそこのホテルで食事を
した経験があるのか、他の意見を言う人は本当にいなかったのか。
悪質であるものの見極めと、そこを正確に突く問い方を
マスコミは学ばなければならないのではないだろうか。
私の立場としては、消費者とシェフ双方の、
食材に対する認識を高めるための情報を発信していきたいと思う。








2013年11月4日月曜日

もてなし・なし

このところ、とある会報誌の仕事で、
居酒屋系の店のリサーチと取材をやっている。
はっきり言って、ダメだこりゃ、な店が実に多い。
何がダメって、電話の応対である。
何度電話しても、「オーナーが留守なんで(ガチャ)」とかね。
電話するたび「折り返し電話するから」と言いつつまったくこない。とかね。
こちらの質問に対して、ものすごく面倒そうに冷たく答える。とかね。
多数店舗を手広く経営する企業であっても、
その本社の広報窓口が広報として機能しておらず、
はあ?へぇ? という対応だったり。とかね。

こちらは別に有料で何かしようというのではないし、
リサーチと言っても時間のかかるアンケートをするわけでもない。
2、3の確認事項とともに、それがあてはまっていれば取材を依頼する、
というものである。もちろん忙しい営業時間帯をはずして電話している。
何もメディアに対してへつらって欲しいわけではなく、
何らかの理由で断られるのは仕方ない。
が、節度を持って電話している人間に対して、
もう少しそちらも節度ある対応ってものがあるでしょうに、と
あたしゃ言いたくなるのでございますよ。
過去、フランス料理店相手に仕事していた時には
そんな目にはほとんど遭わなかった。
媒体名や肩書きなどのせいか。
見知らぬフリーライターの社会的地位が
それだけ低く見られているということだろうか。

しかし、あなたたちは接客業を生業としているのではないのかい?
人をもてなすプロが、いくら客の問い合わせではないからといって、
メジャーではない媒体だからといって、
そう露骨に素っ気なくあしらうのはなぜなのだろう。
飲食店検索の画面にツラツラと並ぶ、
“おもてなし第一” “細やかなサービス”的なコピーに偽りあり、だ。


しかし、少数ではあるが、親切に対応してくれる人もいることはいる。
きちんと的を得た回答をしてくれる人、あるいは
いかにも人と接するのが好きといった感じで、
それこそ見ず知らずの今初めて電話をしてきた私に対して、
むしろ話が脱線しつつ長くしゃべり込んできたりして、
(それはそれである意味、ちょっと困るのだけれども)
でも、そんな人にあたるとホッとする。
無意識にもついつい親切心がにじみ出てしまう、
その資質を持っていることこそが接客業には必須ではないだろうか。

ちなみに、サービスの語源はラテン語で「奴隷」から来ている。
ホスピタリティはホスピスなどでも使われるように
「(お客に対しての)保護」が語源だ。
私が言っていることは、ホスピタリティやサービス以前の、
マナーレベルでなっとらん、ということなのだが。