短命だったり不遇だったりな人が多いと感じるのは偏った見方だろうか。
貧しく複雑な家庭環境で、幼い頃から客前に立ち、
やがて酒とドラッグに溺れて・・・などというエピソードをよく聞く。
例えば、私が若い頃に初めて聴いて衝撃を受けたビリー・ホリデイは
少女時代にレイプされ、歌手となって成功してからも人種差別を受け、
酒とドラッグに溺れ、44歳でこの世を去っている。
ジャニス・ジョプリンはやはりドラッグで享年27歳、
恋人の事故死と自身も交通事故に遭い
モルヒネ中毒にもなったと言われるエディット・ピアフは47歳。
「Lovi'n you」の超高音で知られるミニー・リパートンは
別にドラッグとかではないけれども31歳だ。
日本人だったら誰かな。美空ひばりはまあそうかもしれないけど、
私が思い浮かぶのは江利チエミだ。
幼い頃から苦労し莫大な借金など何かと不幸がつきまとい、45歳で突然死。
あるいは、存命だが歌手生命としては断っているのも同然な、
ちあきなおみの謎めいた人生とか。
私が持っているCDの中から、そのようなタイプの女性シンガーで、
おそらく、知る人ぞ知るという、
2人のアルバムをご紹介したいと思います。
まずはこの人、ソウル系のアリス・クラーク、
アルバイムのタイトルも名前と同じ(1972)。
私は音楽方面のプロではないので詳しいことは知らないけれど、
彼女は謎めいたプロフィールで、メジャーなアルバムはこれ1枚くらいらしい。
伸びやかでパワフルだけれどもガンガンと攻めるタイプではなく、
どこか可愛らしい甘さもある声質だ。
そして、こちらはカレン・ダルトンという人の「In My Own Time」(1971)。
この人も2枚くらいしかアルバムを残さず、酒&ドラッグに溺れて死んだという。
ジャンル的にはフォーク&ブルースになるのかな、
12弦ギターやバンジョーを弾きながら、
ある種ビリー・ホリデイ的な、聴く者をそそけ立たせるような声で歌う。
彼女の人生は何も知らずとも、何ともせつなくなってくる。
傑作を残し、壮絶な人生を駆け抜けていった、
あるいは姿を消してしまった人たち。
ソウルフルな歌声の持ち主は、1曲歌うごとに
本当に魂を削ってしまう特殊な肉体の持ち主だったのだろうか。
彼女たちが瞬く間に燃え尽きるマッチなら、
さしずめアタシの人生はチルチルミチル(←古い)か。
ああ、きっとアタシは長生きするんだろうな・・・と思ってしまう。
いやしかし。もう少し調べてみると、
サラ・ヴォーンは享年66歳とやはりちょっと早いが、
エラ・フィッツジェラルドは79歳、ペギー・リーは81歳となかなかのご長寿だ。
ソウルフルといえばアレサ・フランクリン(1942~)、まだ生きてますよね?
同い年のキャロル・キングもがんばっているし、
ヘレン・メリルなんて1930年生まれで、つい最近ブルーノート東京でライヴしている。
若い頃ドラッグに溺れていたというリッキー・リー・ジョーンズ(1954~)も
最近来日ライヴをしているし。
短命多しは、やはり思い込みというか、
そのほうが伝説的でカッコイイからという色眼鏡で見ているせいかもしれませんね。
まあそうすると、
才能があってマッチ的人生、才能があってライター的人生、
才能がなくてマッチ的人生、才能がなくてライター的人生。
この4タイプがあるということになりましょうか。