2012年3月18日日曜日

どしたの?

長年、携わってきた大量の『シェフ』、これまでは会社の机脇の本棚に並べていたのだが、自宅での仕事が今後増えるため、家に置くことにした。一箱30冊くらいの梱包で、土日の夜着指定の宅配で発送。

インターフォンが鳴り、ドアを開くと、そこには肩で息をするジイさんが。宅配のドライバーというより、小さくて浅黒く、目がキョロっとしたジイさんだ。職種としての比較になっていないが。ドライバーのユニフォームは着ておらず、私服とおぼしき作業着姿。フラフラしながらようやく1箱をドサッと置くと、「まだ、あっちに・・ハアハア、あるから。今日は台車忘れちゃってさ」と引き返していった。

2箱目を再びフラついて持ってきながら「どうしたのよ、これ? すごい重いじゃない」という。どうしたのよ、とはいったいどういうことだろうか。宅配業者が、重い荷物だからといって普通「どうしたのよ」と言うだろうか? その、意表をつく言葉に、思わず事情を話している私。すると、ジイさんはニヤニヤしながら「だったら自分で毎日1冊ずつ持って帰ればいいじゃない」と言った。それは私も考えたし、最初のうちはやってもみたのだが、他にも荷物がある日は難しいとか、雨の日は濡れたらイヤだ等々で、途中でギブアップしたのだった。しかしジイさんよ、もし私がそうしたら、あなたの仕事を取っちゃうことになるんだが? 

今夜、また別の荷物が届いた。ドアを開けた瞬間、ジイさんは「どうしたの、寝てたの?」という。えっ?  思わず私はあるはずのない寝グセの髪をおさえてしまった「さっき一度来たけど出なかったからさあ」。ああそういうことか、なるほどねって、ちょっと。出なかったからってなんで寝てると思うのか?夕方に。「いいえ、ちょっと近所に買物に。うちは遅くなる分には大丈夫ですから」と答えたら、「遅いのはオレが困るよ」とニヤニヤしながら立ち去っていった。


なんだろうか、配達員らしからぬその言動。
立ち去るジイさんの後ろ姿を見ながら、私の頭の中では、ピンク・レディーのウォンテッドがかかっていた。といっても出だしの1行目だけであり、決して恋した訳ではない。シワの入ったジイさんの顔がどことなしかジャン=ポール・ベルモンドを彷彿させもしたが、またいつもの私の飛躍しすぎる妄想だ。むしろ若干憂鬱なくらいだ。
しかし、人は意表をつかれると、思わず素の自分が出るものなのだなあと思ったのでした。




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