2012年3月25日日曜日

放置プレイ

スーパーでの、食材の話である。
次第に迫るレジを前にして、心変わりする往生際の悪い人がいる。
今日見たのは、レジ脇の栄養ドリンク剤の棚の上に置かれた、
30%引きシールつき、あんぱん。
並んでいる間、今一度カゴの中を見回す。
30パー引きにひかれてついついカゴに入れたはいいが、
ちょっと待てよ、今夜はこれからすき焼きだ、しかしこのパン、
よく見たら消費期限が今日までじゃないか、無理だ、食べられない、
しかし元の売り場にわざわざ行って戻すのは面倒だ、
間もなく自分の番なのに並び直したくない、
しゃあない、ここでさよならしよう。
といった感じだろうか。

レジ前に限らず、各売り場でも、本来の居場所とは異なる
場所に捨てられた食材たちを見かける。
例えば、生ひじきやワカメなどの海藻売り場に、
惣菜コーナーで売っているひじきの煮物パックがあった。
犯人は、どうにもこうにもひじきが食べたかったんである。
惣菜で手軽に済まそうと一度は思ったのである。
しかし、生ひじきを後から見つけ、惣菜に比べたら価格も安いため、
ここはいっちょ、がんばって自分で作ってみるか、と思い、
惣菜を捨てたのだろう。
勇気を出して自炊への一歩を踏み出したことは良いことなのに、
元の惣菜売り場まで戻るくらいのことがおっくうでは、
果たしてちゃんと作ったのか、アヤシイ。
青じそノンオイルドレッシングでもかけてそのまま食べたんじゃないか?

粉売り場で、豚肉が投げ捨てられていたのを見た。
なぜ、ここで? 私はしばし腕を組み、パイプをくわえて推理した。
ははーん。わかったぞ。
犯人は最初に、お好み焼きを作ろうと決めた。
見たまえ、豚肉はバラ肉スライスだ。
豚バラをカゴに入れた後、粉売り場に来た。
そこで、ふと、お好み焼き粉の脇の、たこ焼き粉が目に入ってきた。
たこ焼き、ふむ・・・たこ焼きもいいな。
しかもたこ焼き粉は今月値引き品になっている。
じゃあ、たこ焼きにしよう。
それじゃ、たこ買わなくっちゃ、豚はもういらん。
というわけだ。
しかしこの犯人の罪は重い。
生鮮食品を常温売り場に捨てたのだから。

そんな洞察力鋭いワタクシも、首をひねる事件に遭遇した。
現場はお菓子売り場。
ポッキー(正確にはプリッツ)の横に、同様にたてかけられた、えのき茸。
わからない。犯人はいったいどんな心境の変化の結果、
ここにえのき茸を捨てるに至ったのか。
どんなに考えてもわからない。
プリッツのパッケージ写真と、えのき茸の容姿が似ているから、
なのかもしれないが、だからそれが何なのか。
プリッツを見る。カゴに入れたえのき茸を思い出して取り出す。
えのき茸を食べようと思ったけど、やっぱ、プリッツのほうがいいかな?
・・・ないだろう、その代替え案は。
えのき君、あなたはそういえばプリッツに似ているね、2人ともシュッとして。
プリッツと一緒にいるほうが、あなたにとっては本当は幸せなのかもしれない。
さよなら、末永くお幸せにね・・・

何を言ってるのか、ワトソンくん。
これはもう、放置プレイとしか考えられないのだった。


2 件のコメント:

  1. 梶井基次郎の「檸檬」の模倣!?
    そのえのきは、カーンと冴えかえっていたでしょうか。

    ああ、東京がなつかしいです。

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    1. なるほど。それは思いつきませんでした。
      じゃあ、レモンが手榴弾で、えのき茸はさしずめ細いダイナマイトの束なのか〜

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