2015年9月25日金曜日

夜の訪問者

夜、ソファに座ってテレビを見ていたら、
テレビの斜め上、ロフトの角から、何者かがカーテンを伝い降りてきた。
クモである。足の長い、巨大なクモだ。

虫ってやつは、こちらが見ている気配がわかるんだろう、
「ヤベ、バレちゃった」とばかりにカーテンの途中でいったん動きを止める。
と思ったら、次の瞬間、目にも留まらぬ速さで壁伝いにどこかへ消えた。

日頃から時折、家の中でクモに出会うことがある。
しかしその場合のクモは5ミリ程度のもの。
ほっておくか、気になる時には
空のペットボトルを使い、その口の中心にクモが来るようにして壁に押しつけ、
中に入り込んだらフタをして、外へ逃がす。

しかし今回のクモはデカくて逃げ足が速く、とても捕まえられない。
私は仕方なく新聞紙を筒状に丸め、ソファに待機した。
しばらくして、机の上の壁に這い出てきたのを発見、叩こうとしたが
私がビビッているせいか、うまくいかない。
またしても逃してしまった。

殺虫剤を探すと、どういうわけかアリ用のものしかなかったが、
一応それを用意して再び待機。
やがて、テレビに気がそれ始めた頃、
脇のカーテンを伝って登っていくクモの姿が。
まるで「やれやれ、お家へ帰ろうっと」という感じで、元来た道を戻っているのである。
いったいいつからあいつはロフトの住人になっていたのだろうか。

今が最後のチャンスと、私は殺虫剤をスプレーした。
クモはささーっと下りて、テレビの裏、そして観葉植物の鉢の裏へと移動した。
その間も私は殺虫剤で追いかけた。
やはりアリ用では致命傷にはならないようだ。
しかしだいぶ動きはゆっくりになったので、私はとどめの一撃を加えた。
長かった足は小さく丸まって、動かなくなった。

朝のクモは縁起がよくて、夜のクモは「ヨクモ来たな」と殺したほうがいいと聞く。
あるいは、クモは益虫だから殺さないほうがいいとも。
調べると、殺したクモはアシダカクモといい、
ゴキブリなんかを食べてくれる益虫で、人間には害を及ぼさないが、
見た目が気味悪い不快害虫だとある。

殺さないで何とか外に出す方法はなかっただろうか。
ロフトの住人として黙認してもよかったのではないだろうか。
今後、我が家にはゴキブリが出ることになるのだろうか。

テレビでは、シリア難民の受け入れ拒否を示す国のニュースが流れている。
私は罪の意識に苛まれる。


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