夜、ソファに座ってテレビを見ていたら、
テレビの斜め上、ロフトの角から、何者かがカーテンを伝い降りてきた。
クモである。足の長い、巨大なクモだ。
虫ってやつは、こちらが見ている気配がわかるんだろう、
「ヤベ、バレちゃった」とばかりにカーテンの途中でいったん動きを止める。
と思ったら、次の瞬間、目にも留まらぬ速さで壁伝いにどこかへ消えた。
日頃から時折、家の中でクモに出会うことがある。
しかしその場合のクモは5ミリ程度のもの。
ほっておくか、気になる時には
空のペットボトルを使い、その口の中心にクモが来るようにして壁に押しつけ、
中に入り込んだらフタをして、外へ逃がす。
しかし今回のクモはデカくて逃げ足が速く、とても捕まえられない。
私は仕方なく新聞紙を筒状に丸め、ソファに待機した。
しばらくして、机の上の壁に這い出てきたのを発見、叩こうとしたが
私がビビッているせいか、うまくいかない。
またしても逃してしまった。
殺虫剤を探すと、どういうわけかアリ用のものしかなかったが、
一応それを用意して再び待機。
やがて、テレビに気がそれ始めた頃、
脇のカーテンを伝って登っていくクモの姿が。
まるで「やれやれ、お家へ帰ろうっと」という感じで、元来た道を戻っているのである。
いったいいつからあいつはロフトの住人になっていたのだろうか。
今が最後のチャンスと、私は殺虫剤をスプレーした。
クモはささーっと下りて、テレビの裏、そして観葉植物の鉢の裏へと移動した。
その間も私は殺虫剤で追いかけた。
やはりアリ用では致命傷にはならないようだ。
しかしだいぶ動きはゆっくりになったので、私はとどめの一撃を加えた。
長かった足は小さく丸まって、動かなくなった。
朝のクモは縁起がよくて、夜のクモは「ヨクモ来たな」と殺したほうがいいと聞く。
あるいは、クモは益虫だから殺さないほうがいいとも。
調べると、殺したクモはアシダカクモといい、
ゴキブリなんかを食べてくれる益虫で、人間には害を及ぼさないが、
見た目が気味悪い不快害虫だとある。
殺さないで何とか外に出す方法はなかっただろうか。
ロフトの住人として黙認してもよかったのではないだろうか。
今後、我が家にはゴキブリが出ることになるのだろうか。
テレビでは、シリア難民の受け入れ拒否を示す国のニュースが流れている。
私は罪の意識に苛まれる。
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