仕事帰りの電車、駅と駅の間あたりで急ブレーキ。
1本先の電車が駅のホームで人身事故という知らせ。
車内はそこそこ混んでおり、私はドアの前に立っていた。
その状態で15分程停まったまま。
結局、電車は前の駅にバックすることとなった。
前の駅に着いてドアがあくと、大勢の人がホームに降りたが、
それでも車内の座席の大半は埋まったまま。
おそらく座り組は終点近くまでの長旅派で、
意地でも運行再開を待つしかないのだろう。
よくある、お詫びとお待ち下さいをくり返す放送は神経を逆なでするが、
どういうわけかこの時は放送が何もなく、やけに静かな車内で、
それはそれで不気味なものであるなあ。
さあて、私はどうしようか。
最寄り駅まであと10駅ある。
空いている席を見つけて待つか。
同じ沿線を利用している人から、
「1時間以上動かないと駅員が言ってる」という情報がケータイに入る。
改札の駅員に聞くと、ここからは何も良いアクセスがないので、
まずはとなり駅まで歩き、そこからK駅行きのバスに乗り、
K駅からは折り返しの下り電車が出るとのこと。
となり駅まで歩いた時点でケータイの電源は切れ、私のスタミナも切れた。
ケータイが切れていると時間もわからないが、おそらく22時30分頃。
改札で同様に案内されている人が多くいたので、きっとバス停は長蛇の列だろう。
時間潰しと自分へのチャージのため、目の前にあったファミレスに入った。
店内はかなり混雑していた。
となりは、田舎のホストみたいな若い男と若い女子。
ホストくんは丁寧語で彼女にあれこれ質問したり、
髪型をどうするといいといったアドバイスをしている。
何らかの商売に勤務するにあたってのオリエンをしている模様。
何らかのという業態部分が、私にはわからない。
「頭が小さくてほっそりしているというのが条件だったんですよ。
洋服や靴はもちろんこちらで用意しますから」
とまるでモデルのスカウトマンのようなことをお兄さんは言ってるのだが、
どう見ても(チラ見だけど)ファッション業界の人ではないのだよな。
ガールズバーってやつかな?
すると、彼女は「ちょっと最近太ってきたかも」と体型を気にしている様子。
「じゃあ立ってみましょうか」と、二人して立ち上がった。
私は彼女と横並びの位置のため、向かいの彼しか視界に入れられない。
「あっ。えーっと、そうですねえ。・・・もうちょっと痩せよっか?」
お兄さんの言葉はまるで私に向けられているような気がして、思わず下を向く。
「足のサイズはいくつですか?」
「24.5です」
「えっ? 結構あるんだね・・・」
なんだかテンション下がってきているお兄さん。
「私は23.5ですけど!」と言いたくなるのをおさえるアタシであった。
そうしてしばらく一人バーチャル面接で時間を潰した後、バス停に行くと、
まだ長蛇の列で、車内はギュウギュウ詰め、
自宅についたのは深夜0時30分くらいだった。
実家の父の見舞いに行き、この一件を話した(ファミレスの話はしていないが)。
父は退院後、何とか普通らしき生活を送っているが、
半年前の父とは明らかに違う、弱った老人になってしまった。
「まったくさ〜月曜の朝とかならまだしも、水曜の夜に飛び込むってどういうアレかね。参ったよ」
と、深い意味なく私は話した。
すると父は言った。
「いや、オレはわかるね。入院して一番きつかった時、死のうと考えたから。
死にたいとなったら、朝も夜もありゃしない。自殺とはそういうものだ」
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