2014年2月8日土曜日

日本酒のお年頃

お酒を飲むのは好きなのだ。
好きなのだけれど、弱いのだ。それがザンネンでならない。
何もザルと呼ばれるようなレベルになりたいわけではないが、
普通に飲めるくらいになりたい。
と言うと、普通ってどれくらいよ?とみんな聞く。
だからその〜、みんなと同じくらいよ、と答える。

しかし考えてみたら、私の周辺の“みんなたち”は、結構いけるクチが多い。
みんなと同じ=普通ではなくて、
かなりのもんということになってしまうかもしれない。
でも、みんながみんな、かなりのもんだったら、
やっぱりそれは並ってことになるのではないか?

看護師に「注射する際の消毒は、アルコールなしのものと指定したほうがいい」と
過去2回言われたことがある。
脱脂綿で拭かれた後、皮膚が赤くなってしまうからだ。
それって、明らかに体質的にアルコールを受けつけない人に間違いなし、だろう。
確かにお酒を飲むと、すぐに顔も身体も赤くなる。
特にビールに弱く、350㎖缶だと50㎖が残っているくらいで、
もうすっかりゆでダコだ。
しかし、飲めない人というのはたいていグラス1杯すら飲めないのであり、
極端な人だと1滴もダメではないか。
私の場合はワインなら2杯、ジントニックなどのカクテルなら2〜3杯大丈夫だ。


今までお酒のせいで吐いたことが一度もない。
もともと吐くことに並ならぬ恐怖心を持つ私は、
自分の限度を知るまで飲むことはせず、どうしてもセーブしてしまう。
ハメをはずせない、つまらない女ですね。
一度だけ、20代の頃、初めてのローマ訪問で調子づいてワインをかなり飲み、
ホテルの部屋で一晩中苦しんだことがある。
しかしその時も、吐き方がよくわからないというか、
そんな状態(=吐いたらラクになるのに〜と人が言う状態)になっても
まだ身を委ねられず、
結局、バスルームの前の床に体育座りになって、
悟りの境地をなんとか開こうとし、
難産の妊婦のように苦しみの中にも時折波が引いてうたた寝し、
朝までそこで過ごしたのだった。


夜遅く空いている電車で、向かいに座り赤ら顔でグダッと寝ていたサラリーマンが
突然立ち上がり、靴を脱いだかと思うと、座席の上に立って乗り、
走行中の電車の窓を下げ、首を外に出した。
その続きを見届けるのは恐ろしいのと
幸いにも次が私の降車駅だったので、その場をすぐに去ったのだが、
あのサラリーマンは朦朧としながらも、あくまで車内で失態を起こさぬよう、
そしてご丁寧に靴まで脱いでいるのだから、
たいしたもんと言うか何と言うか。
本当はハメをはずせないタイプの人だったのだろう。


酒の失態の代表格のような悪名高き扱いをされてきたのが日本酒である。
日本酒の二日酔いの恐ろしさたるや・・・とみな口を揃えて言うのだ。
そのため、弱気な私はこれまでずっと手を出せずにいた。
味わいもよくわかっていなかった。
ところが昨年から、唎酒師の関係の編集の仕事が定期的に入るようになり、
日本酒を勉強しないわけにはいかなくなった。
恐る恐る試してみると・・・。
あら、まあ!! とっても美味しいではないか〜。
それに、1合飲んでも大丈夫なのだ。
100人乗っても大丈夫!!(byイナバ物置)な気分だ。
ビール1杯飲むよりむしろ赤くならないし、ボワーっともしない。
今のところ、最高記録は1合半。
目標はするっと2合飲めるようになりたいな。理想は3合だけど。
(普通に飲める皆様方、笑わないように)


日本酒が悪く言われてきたのは、若い頃に質の悪い安酒を飲んだ経験や、
酒豪たちのケタ違いの酒量によるエピソードであり、
私のようなチビチビ派で、いい酒の情報を得られる環境にある者は、
そんな心配することもなかったのだ。
また、不思議なことに、周囲の友人・知人たちも
「この頃、日本酒が旨くって」と言うようになった。
ひょっとすると日本酒は、20代の若い身体よりも、
40代以降の中年の身体にフィットする酒なのではないだろうか。


今日は大雪だ。夜になった今もまだ降り続けている。
昼間、テラスの積雪を四合瓶ではかってみたら、すでにこんなに積もっていた。



これは岡山県勝山の酒で、女性杜氏が造っている、
炭屋彌兵衛 純米造り 無濾過生原酒(辻本店)。
先日、酒販店を取材した際に買ってきたものだ。
この蔵元は酒好きの谷崎潤一郎ら文化人との交流があり、
『細雪』は、かの地に逗留している時にも書かれていたらしい。

私は先ほどまで、アメリカ料理のレシピ本の試作&校正を行っており、
家の中はケイジャンスパイスの香りが漂っているのだが、
そろそろ休憩して、雪見酒といきますか。
日本酒の美味しさがわかるようになるという点においては、
中年になるのも悪くないね。





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