2015年10月12日月曜日

目が黒くなる、って言いたいんですよ

9月からおかしい。
私の体の左側、背中から腕、手首に至るまでが痛くてたまらない。
元々、ひどい肩こり症ではあるが、
いつもの「こっている」つらさとは訳が違い、
とにかく「痛い」のである。
これがいわゆる四十肩? 五十肩?とも思ったが、
その場合は、腕を上げることができないらしい。
私の場合、朝起きた時が一番痛みがひどく、顔を洗う体勢は悲鳴が出るほどだけれども、
それ以外の時間帯は、腕を上げたりまわしたりなどは普通にできる。
一定方向に腕を動かすと痛みが走るというわけではなく、
何もしていない状態で、常にズキンズキンと痛むのだ。

耐えきれず、9月の中旬に2回、近所のカイロプラティックに行った。
それでも治らず、整形外科に行った。
待合室では、私以外の患者すべてが高齢者。
ミネラルウォーターサーバーから水を注いで飲んでいるおばあさんに、
別のおばあさんが「これは何か体に良い飲み物なんですか?」と聞いている。
「わかりませんが、ご自由にとのことなのでいただいてますの」
「では私も。(ゴクリ)あらほんと、なんか効きそうな味わいですね」
何が「ほんと」なのかわからないが、信ずるものは救われるといいですわね。

首のレントゲンを撮ったところ、ストレートネックだと診断された。
そして、首の軟骨がすり減って骨と骨が当たり、それが神経にさわって腕にまで痛みが
及んでいるのでしょう、と早口でそっけなく若い医師は言う。
鎮痛剤と筋肉の緊張を緩める薬を胃薬と共に処方された。

2日ほど飲んでみたものの、わずかにやわらいだような気がする程度で、
相変わらず痛みが続いている。
また病院に行ったならば、今度は注射を打つことになる。
あくまで痛みの緩和であり、根本的な治療ではないだろう。
薬嫌い、病院嫌いの私は、「あら、ほんと。治ったわ」という気持ちにはなれない。

そんな折、某有名シェフとフレンチレストランで夕食の席をともにした。
私の左腕の事情を話すと、すごい気功師を知っていると言う。
どんなに具合が悪い状態でも、その人のところへ行けば1回か2回の治療で必ず治る。
行きはタクシーから這うような状態が、帰りは身軽に歩けるくらい。
⚪︎⚪︎料理長(和食の老舗有名店)は、けんしょう炎で包丁が握れなくなったのに、
一発で治ったんだよ、と。
こちらが何も言わなくても「ゴルフやったでしょう」などと見透かされてしまうそうだ。
それほどのスゴ技にして、1時間6000円と料金は一般的。
私は「是非ともその方を紹介して下さい!」と懇願し、電話番号を入手した。

シェフからの紹介ということで、翌日に診てもらえることになった。
都内某所、普通のマンションの一室(おそらく自宅)。
出てきたのは、ペギー葉山の旦那の根上淳と美味しんぼの海原雄山を足したような、
濃い顔の60代くらいの男性。
白い袈裟のようなものを着て、髪を一つに結わえている。
怪しいっちゃ怪しいのだが、
なにしろ、シェフたちのお墨付きなのであるから、間違いはないはずである。

左側を上にして横向きに寝るように指示される。
シェフから「背後に回られてじーっと手かざしされるからナンだけれども
気にしなくてよろしい」と言われていた通り、
センセイはうしろから、私の腕や肩に触れるか触れないかくらいの距離で
手を動かしている。

ちなみに、私は気功初体験ではない。
20代の一時期、今でいうところのパニック障害に陥ったことがあり、
その時に中国人の気功師のところにしばらく通っていた経験がある。
目をつむって気功を受けている間、こめかみや唇など、
顔のラインにビリビリと弱い電流のような、むずかゆい何かを感じ、
さらにそれが移動していくという不思議な感覚を味わい、
確かに気功のパワーはあると実感した。

しかし、あれから20年ぶりの気功である。
中国人のセンセイは物静かな青年で、私は椅子に座った状態で、
ほとんど体に触れられることはなかったが、
今はあまりにも濃すぎるセンセイのキャラ、私は布団で寝ている、
指はちょいちょい体につく、という状況のため、私は少々落ち着かない。
できるだけ無の境地になって、気功のパワーをピュアに受け止めようとするのだが、
どういうわけか、私の頭の中には「卑劣なマッサージ師」という
アダルトビデオ的妄想が浮かんでしまうのである。
そのうち、私が何もしゃべっていないのに、
「私はそんな者ではありませんよ」と見透かされて言われたらどうしようかと
ハラハラし、ますます落ち着かないのである。

「引っ越しを手伝うようなことをしていませんかね?」とセンセイ。
よかった、妄想はバレていない。
しかし、的中もしていない。
9月の上旬にデザイナーと打ち合わせする際に、
資料の本をたくさん入れた、ものすごい重いバッグを持ってしまい、
それ以来、調子が悪くなった気がする、でもそれは右肩にかけていたので
なぜこんなに左側が痛いのかはわからないと私は答えた。

1時間のうち、最初の30〜40分くらいが気功で、
残りの20分くらいは軽めの整体を施された。
「確かに首の具合もよくないけれど、腕の痛みと首とはまた別問題ですよ、
っていう話をしたいんですよ
「腕のつけ根のあたりに、コリコリした塊があるでしょう、
ここが腫れて血管を圧迫しているせいで腕が痛いんですよ、って言いたかったんです
センセイは語尾が独特の言い回しをする。
今、話しているのになぜ「したいんですよ」とか「言いたかった」と言うのだろうか。

気功を受けたその日と、次の日くらいまではなかなか調子がよかったが、
3日目の朝、起きるとまたしても痛みが始まってしまった。
その次の日も、またその次の日も、ちっともよくならない。
シェフは「1回あるいは重症の場合は2回で」と言っていたので、
私はもう1回、気功師に電話を入れた。
今度は2時間やらせてくださいという。


引っ越しと言われてから一つ思い出したことがあった。
7月、私は室内の模様替えをし、本棚と机の位置を入れ替えた。
あれから2カ月以上経っていたので、因果関係があるとは思い浮かばなかったのだが、
その旨を気功師に伝えると、やはりね、とばかりに彼はうなずいた。
「右のほうが筋肉があるんですよ、だから力のない左には負担が大きすぎたんです、
 ってことを言いたかったんです。本を全部出すだけでもかなり重いのにね、
 日を分けてやらず全部いっぺんに最後までやっちゃったもんだから・・・」
驚きだ。私はそこまで細かく話してはいないのに。やはり彼には何かが見えているのか?

ふと夜中に模様替えを思い立ち、すべて一人でやった。
本を床に積み上げるだけでも一苦労だったが、
やり始めると止まらなくなっていた。
家具の足の下にかませることでスルーッと動かせるコースター状の滑車を使ったのだが、
滑車を入れるその瞬間だけは、家具を片手で持ち上げて支える必要がある。
何とかやり遂げ、アタシってばスゴイ!と自分を褒めたたえたのだが、
私はやっぱり大川栄策ではなかったのだ(←わかる人にはわかる説明)。

それだけの時間の経過を前回は考慮できていなくてごめんね、とセンセイは言った。
2カ月前からの損傷だと何か気功の仕方が違うんだろうか?
今回は最初の1時間が気功で、残り1時間が整体だった。


今後はここまで悪くなる前に定期的にメンテナスとして通ったほうがいいのか、
あるいは駆け込み寺的に来るのでよいのかを聞くと、後者でいいと彼は言った。
「大丈夫、あたなの場合は、目が知らせてくれます」
「え?」
「目が黒くなりますから」
私の目の黒いうちは・・・と、むしろ生きてしっかりしている意味としては使われるが、
具合が悪くなると目が黒くなるとはこれいかに。
「目の周りが黒ずんできたら具合悪い、ということなんです」
ああ、そういう意味か。

センセイの独特な語尾は、ひょっとして、
私の体の声をメッセンジャーとして伝えているんですよ、
という意味だったのかもしれない。

「あなたは早く寝ないとダメです。睡眠時間もそうだけれど、
 寝入る時間が重要で、1時過ぎとかに寝ていてはダメ。
  遅くに寝ると、次の日、仕事するのが嫌になるタイプですってことなんです」
仕事するのが嫌になるタイプってどんなタイプや?
私の体がそう伝えているのか?
いつも1時過ぎに寝ることが多いのだが、ということは・・・


2回目の気功に行ったのが一昨日。
昨日そして今日と、まだ腕の痛みは続いている。
私の目は黒くなっているだろうか。
ああ、もう12時過ぎてしまった。
早く寝なければ、明日仕事するのが嫌になってしまう。

ところで、スゴ技でたちまち治すという話はどうなっているんですか、って
言いたいんですよ、私は。


3 件のコメント:

  1. 気功は科学的に効果が検証されてない(できない?)から「民間医療」なのよね、とで調べていたら以下のような、民間医療に対する気持ちを患者視点で書かれたページを見つけました。
    http://www.twmu.ac.jp/TYMC/patient/pai09.html

    リンクをたどって全部読んでみたのですが、医療と代替医療の間で揺れ動く患者や家族の気持ちがよく分かる良い内容だと思ったのですが、表からのリンクは消されているようです。
    (取消とか色々事件が重なったから? 想像の域ですが)
    http://www.twmu.ac.jp/TYMC/patient/pai01.html
    http://www.twmu.ac.jp/TYMC/patient/from_physician.html

    個人的には「民間医療」は、お金をかけられる人は個人の責任で利用するのも社会貢献なのかな、程度に思ってます。
    皆保険の国日本で、ホントに効果があったら「医療」で採用されるはずなのに採用されてないわけだから。

    民間医療に携わってる人は、信じる人がいなかったら失職するわけで「鰯の頭も信心から」

    (お気に入りの本の編集者であった縁から辿り着いてます(^^) 記入者何にしたら良いのか分からない〜(^^;)

    返信削除
  2. それと、整形で私以外の患者すべてが高齢者ばっかり〜な件ですが。
    世界一の長寿国で、国民平均年齢も約47歳と高齢な日本ですから、高齢者だらけなのは当然なんですが、医療に関わらないと世界一多いはずの老人を目にすることはほとんどないため、整形に行かれてビックリされたのだと思います。
    皆の行く道、健康寿命こそを伸ばさねば、と私も今から心しています(^^)

    また、「ストレートネック」はそのものが病気(病名?)ではないので、直すのは大変です。
    背筋&体全体で頭重を支えるようにする必要があるわけですが、長年の姿勢の癖はなかなか直せないですよね。
    そこで民間医療が台頭してくるわけです。

    返信削除
    返信
    1. junkoさん、コメントありがとうございました。また、私が編集した本を気に入ってくださっているとのこと(アノニマのレシピ本かな?) 、嬉しいです。
      結局、その後、いつも月1くらいでお願いしている整体に行き、少し痛みがやわらいできたみたい、というところです。気功に関しては、20代の時の体験では確かに効果を感じたのですが、今回は残念ながら今ひとつわからず。お金もこれ以上投資できそうにありません。今後は整体と、ヨガやストレッチを行って、痛みが耐えられないようであれば整形外科へ薬をもらいに行こうかなと思っています。

      削除