2015年3月12日木曜日

呆然は役立たない

昨日の出来事。
取材を終えて、靖国通りに面した地下鉄口に向かって歩いていたら、
歩道で手を大きく挙げている中年男性が目に入ってきた。
足元には盲導犬。
その人の横を通り過ぎ、階段に差しかかったところで
やっぱり気になって、振り返り、様子をうかがう。
歩道側の車線にはタクシーがなかなかやって来ない。
センター車線には空車のタクシーが数台来たのだが、通り過ぎていく。

私がとめましょうかと申し出て、代わりに手を挙げた。
ほどなくしてタクシーがとまった。
おそらく、私の陰で盲導犬の姿は運転手に見えていなかったのだろう。
ドアが開き、彼らを誘導しようとしたら、
白髪の運転手はあからさまに嫌な顔をして
「犬乗せんの?」「毛が落ちるんじゃないのぉ?」と言った。
ノーとは言わずとも拒否していることは明らかだ。
私は、呆然としてしまった。口ぽかーんと。
こういうのを本当に呆然って言うんですね。
しかしそれは、犬を連れた男性にとってはただの沈黙の時間でしかない。
運転手の嫌味な顔を彼が見えないことはある意味幸いな気がするが、
おそらくすべて心の目でお見通しだろう。
「ああ、じゃあいいです」と彼は引き下がった。
タクシーはそそくさとドアを閉め、走り去った。
そこでようやく我に返った私は、
「ええっ? こんな、こんなバカな話があるの?なんで?」とわめいた。
「まあね、結構あることですよ。でもいいです、そういうタクシーに乗ってもね」
と男性。
「そうですよね、気分悪いですよね、次探します」と
私は再び手を挙げた。
1分くらい後に次がとまった。
私は心の中で、今度拒否してみろーただじゃおかんぞっと息巻いていたので、
おそらく凄みのある態度で
「乗せてくださいっ!」と言ったと思う。
そのタクシーの運転手はさっきとは関係ないのだけれど、
ウェルカムな雰囲気でもなさそうだったので、つい。

彼を見送った後、私はまだ怒りと悲しみがおさまらなかった。
そして、自分の不甲斐なさにも腹立たしくなった。
なんでピシッと言い返せなかったのか。
バカ。アホ。役立たず。

乗車拒否の苦情は、公益財団法人「東京タクシーセンター」というところに
伝えるのがよいと聞き、すぐにメールを送った。
そして今、センターから電話がかかってきた。
「決して許されないことです。運転手を特定して厳重注意したい」と
なかなかちゃんとした対応で少し安心したけれど、
ここでまたしても私の不甲斐なさが浮上する。
会社名と車体の色だけは覚えていたのだが、ナンバーの一部など
確実に絞り込める要素を記憶していないのだ。

もし次に同じことがあったら、呆然とせずに毅然と言いなさいよ。
タクシーは  ナンバー覚えて ナンボのもの。だぞ。

それにしても。
盲導犬は座席に座るわけでもなく、服だって着ている。
多少は毛が落ちるのかもしれないけれど、
靴の裏だかズボンの裾だかに少しついたくらいで、
それに気づく人がどれほどいるのだろうか。
あるいは、犬が降りた後、運転手はささっと点検するくらいできるでしょうよ。
友人のお父さんは元タクシー運転手で、粘着テープのコロコロを用意していたそうな。




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