2012年7月16日月曜日

秘湯とひゆ 粋といき

思い込みで読み間違いをして恥をかく、
誰しもそんな経験の一つや二つ、ありますよね。

私が未だ忘れない間違いの一つは、
秘湯を「ひゆ」だと思い込んでいたこと。
この仕事の駆け出しの頃、なぜだか銀行のお偉いさんと
高級フランス料理店でお食事をすることになり、
そこで温泉の話になった時、
「"ひゆ"巡りなんかもいいですね」とか何とか私は言ったのだった。
「えっ? ひゆ・・・ひょっとして"ひとう"のことかな?」
アタシはマチャアキのごとく、テーブルクロスを
さっと引き抜いて頭からかぶりたい心境でございました。

それから、もう一つ。
車の免許を取って間もない頃、
バイト仲間で車の整備士の男の子が助手席で
私が運転をしたことがあった。
ガソリンがきれそうなことに気づいた私は、
「あー。もうメーターが限りなくエンドに近づいてる!」
すると彼は大笑いし、「え?今なんて言った?」
といじわるにももう1回言わせやがった。
EmptyのEマーク、てっきりEndだと思っていたのだ。

仕事の関係者で年配男性が、
「粋」のことをよく"すい"と言うのが前々から気になっていた。
なぜ"いき"と言わず"すい"と言うのだろう。
確かに「純粋」などで"すい"とも読むが、
"いき"を意味する際には、私の中に"すい"という感覚はない。
そのため、この人は読み間違いしている、あるいはわざと
業界風(何の業界だ?)に言ってるのか、くらいに思っていた。

しかし、ある時知った。
歴史的に見て、上方は"粋=すい"、江戸は"いき"だということを。
彼は京都人であり、私は横浜人である。

では、"すい"と"いき"は同じ意味なのか。
今ではほとんど同じ意味として使われているが、
正確には違うらしい。
九鬼周造の『「いき」の構造』を読むと、
"いき"というのは「媚態」と「意気地」と「諦め」から成り、
これは「性・武士道・仏教」ともつながってくるという。
って、何言ってんのかわからないかもしれないが、
(実際、結構難しい本ではあるので私もまだ理解できていないけれど)
「媚態」(性)はもろちん異性関係のことである。
媚態と聞くと女がこびへつらうようなイメージがあるのだが、
九鬼はそうは言ってない。
男女間における緊張をともなった二次元的態度、つまり
お互いを意識し色気に惹きつけられ、近づき、さぐりながらも、
交わってはおらず、どこまでいっても平行線である、
それが"いき"ということらしい。
「意気地」(武士道)は、まさに意気=いき。
武士は食わねど高楊枝とか、宵越の銭を持たぬといった江戸っ子の気概。
世のためにひと肌脱ぐといった道徳精神や、
異性に対して媚態でありながらも、状況次第ではプライドを持って
突き放すような反抗も含まれる。
そして「諦め」(仏教)は、執着しない、あっさり、すっきり、
それがつまりは野暮が洗練されて垢抜けているということ。

一方、西の"すい"は、赤白の華やかな着物であったり、
茶道や花柳界に通じていること、純粋に突き詰めている行動を指す。
逆に、江戸の"いき"は灰色や褐色・青色をベースに
縦縞(ここにも二元性が象徴されている)といったシブい着物であり、
突き詰める(=執着する)のは野暮とされる。

なるほどねえ。
おや? ひょっとするとアタシってば、"いき"な女ではなかろうか。
グレーだの青だのの服が多いし、
どこまで行っても平行線な関係、意地を張る、結局は諦める・・・。
得意のパターンである。そっかそっか。"いき"なんだな。
しかし、いきって・・・結構キツイもんだなあ。
ああ、いーや。アタシはまだ「いきがっている」=野暮なんだ。
結構、執着して往生際悪いもんなあ。
媚態ってのもまったく自信がないしなあ。
縦縞というより横縞(こちらは野暮とされる)だよなあ。
だけど、そもそも"いき"に生きたいのかな?

よーわからんので、結論なしに、
読み間違いの話にもどって終わりたいと思います。
(突き詰めないのが"いき"だから〜ということで)
先日、深夜に女友達Y.Oとチャットしていた時、
彼女からの最後のメッセージを見て、
私は衝撃を受け、一人激しく動揺した。

じゃあ、私はこれからアタルのビデオを観て寝ます。

ええっ? これから「アダルトビデオを観て寝る」って・・・?
そんなことを、まるで歯を磨いて寝るくらいの自然さで言うとは?
(※アタル・・SMAP中居くん主演のテレビドラマのタイトル)

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